葉巻はサイズや形が異なるだけでなく、使用するラッパーの葉の色合いも異なる。ラッパーの色は葉巻ブレンドの味に影響を与えるのはもちろんだが、葉巻の中で最も目立つ部分であり、魅力的な外観を作るための最も重要な要素である。 美しいドレスのように綺麗なため、フランス人は、ラッパーのことをla robe(ドレス)と呼んでいる。 葉巻工場では、ラッパーをさまざまな色合いや等級に分類しているが、葉巻を吸う場合は、ラッパーの7つのカテゴリー(写真の左から右)を知っていれば十分である。
① Candela - 緑の色合いで昔は人気だったが、今は時代遅れになっている。 ② Claro - 明るい黄色。ほとんどのコネチカットはこの色のラッパーを使用している。 ③ Colorado Claro - 淡い茶色。キユーバの銘柄によくあるラッパーの色。 ④ Colorado - 赤みのある淡い茶色。EMS (English Market Selection) ⑤ Colorado Maduro - ミドルブラウン。アメリカ市場向けのラッパーの色。 ⑥ Maduro - ダークブラウン。Broadleafのラッパーでアメリカ市場に大人気。 ⑦ Oscuro - ほぼ黒色。人工の染色作業で作られることが多い。
ラッパーの色は、発酵期間と温度によって決まる。 原則として、発酵期間が長く、温度が高いほど色は濃くなる。 ただし、すべてのたばこの品種が暗いMaduroまたはOscuroの着色に適しているわけではない。直射日光の下で栽培されたオイルの濃度が高い、葉が分厚いたばこは長い発酵工程で高温に十分に耐えられるため、着色に最適である。
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葉巻のラッパーは、愛煙家の目を惹く美しい衣装だ。実際、ファッションの分野のエキスパートであるフランス人は葉巻ラッパーを「la robe」と呼ぶ。服の意味である。ちょうど季節ごとの色の流行がファッションビジネスに影響するように、頻繁ではないが、ラッパーの色もゆっくりしたペースではあるが流行によって変化する。長い間、コネチカット・ラッパーの colorado claro の色合いはプレミアムシガーの「礼式に従った」色と考えられている。コネチカット・ラッパーの平らで薄い葉脈は葉巻を包むための最も適していることは間違いなく、明るい色合いとなめらかな艶と肌合いは、マイルドな葉巻を好む愛煙家に絶大な支持を得た。 しかし、この頃の愛煙家たちは、よりコクのあるボディとより強い味わいのブレンドの葉巻に好む。ラッパーは味わいの10~15%しか影響を与えないが、その視覚的外観は、葉巻の特性をシガースモーカーに示すのに大きな影響を発揮する。より暗い色合いのラッパーは、愛煙家がより挑発的な色合いだと感じているため、最近では大きく需要を増やしている。 より暗い色合いのラッパー色、「マデュロ」。マデュロ・ラッパー葉を作るにはいくつかの方法がある。
「マデュロ」はスペイン語で熟成を意味する言葉である。熟成イコール時間と言っても過言ではないほど、マデュロ・ラッパーはより多くの時間を必要とする。 まず、マデュロになるために選ばれた葉は、刈り取りの時期を遅らせて畑に残される。日光を十分に吸収して時間をかけた分だけ、油分と糖分の含有量を増やしていく。次に、ラッパーのたばこ葉を高温で発酵させる。より長く、より高温で発酵させる Pillon (Bulk)ことによって、自然に暗い色合いに到達する。
しかし、すべてのタバコがこのプロセスに適しているとは限らない。Connecticut Broadleaf, Habana 2000, Mexican Sumatran などの厚みとたくさんの葉脈を持つ種類のタバコが長時間の高温発酵(発酵温度は通常45℃のところ65℃)に耐え、マデュロ・ラッパーとなれるタバコ葉である。自然な方法で作られたマデュロ・ラッパーの葉巻は、僅かにざらっとした質感と多少の色斑ができるが、これもこの発酵プロセスを経てきたためである。
高温でタバコを発酵させることはかなりの手間がかかる。より多くの時間と人手が必要になるだけでなく、このプロセスの途中でミスがあった場合は、完全な損失となる。葉巻メーカーの何社かは、時間とコストを節約、しいてはリスクを削減するためスチーム調理器具を使用しタバコ葉を2時間位蒸す方法でマデュロ・ラッパーを作っている。この方法を使用すれば、短時間で多くのマデュロ・ラッパーを生産することができる。 多くの人は、この料理されたマデュロ・ラッパーに騙されたと思うかもしれないが、メーカーは均一な色にする唯一の方法だと主張するだろう。この点で、料理されたマデュロ・ラッパーを識別するのは非常に容易である。ラッパーに少しの斑もなく均一に暗色をしていたら、メーカーの希望通り、それは料理されたマデュロ・ラッパーである。 一方でマデュロよりさらに暗い色合いの Oscuroは、”Cooking”の方法でしか作ることができないのも事実である。
たばこ葉を自然な染料から作られる”Casing sauce”と呼ばれる液に浸すかスプレーしてマデュロの色合いを作り出す。ほとんどの場合、「甘味料」が液に加えられたばこ葉の自然な甘味をより高めようとしている。このような方法でつくられたマデュロ葉巻の見た目があまりにも良いため、真実から離れるばかりである。識別する方法も必要なく、唇と指についた汚れが哀しい存在を証明してくれる。 この染色によるマデュロ葉巻は、欺くという言葉に限り無く近いとみなして間違いないだろう。実際にこの方法によるマデュロ・ラッパーの葉巻が存在するが、この方法はドライシガービジネスの専売と考えるべきである。
たっぷりの油の艶を纏ったどれほどセクシーな暗色であっても、それが本来の自然な方法の結果でない場合、私はマデュロ・ラッパー葉巻を吸いたくない。最良の製品を作る“ショートカット”はない。なぜなら、誰にも時間を操ることはできないのだから。